旧伊庭邸
2025年10月03日
旧伊庭邸は、彦根市にあるヴォーリズ設計の住宅建築で、1921年に建てられたとされています。
施主は伊庭貞剛氏。三井銀行の頭取を務めた人物で、彦根藩の家老職を代々担ってきた伊庭家の出身です。
外観は、ぱっと見ただけでは「洋館」と言い切るには少し迷うような佇まいです。
瓦屋根に白壁、庭の緑とのなじみ方など、和の印象が強く、町並みにも自然に溶け込んでいます。
一方で、窓の形や玄関まわりの意匠、屋根の角度などには、ヴォーリズらしい洋風の工夫がさりげなく取り入れられています。
中に入ると、印象は一気に洋館らしくなります。
応接室や食堂、寝室などが当時のまま残されており、木製の建具や暖炉、天井の梁など、細部まで丁寧に設計されているのがわかります。
生活のしやすさと、来客を迎える場としての落ち着きが、無理なく両立されているように感じました。
また、邸内には畳敷きの和室も設けられています。
洋風の空間の中に、ふと和の部屋が現れるような感覚で、不思議と落ち着く場所でした。
ヴォーリズの住宅建築では、こうした和洋折衷のつくりが見られることが多く、住む人の暮らし方や用途に応じて、空間の性格を柔らかく切り替えられるようになっています。
旧伊庭邸でも、格式ある和室が設けられており、家の中での過ごし方に幅を持たせていたのではないかと感じました。
邸内には、建築当時の設計図も展示されています。
図面は英語で記されていて、寸法や部屋の配置、窓の開閉方向などが細かく描かれています。図面の端には「W.M. Vories & Co.」の表記があり、ヴォーリズ建築事務所による設計であることがうかがえます。
図面を見ていると、建物の構造だけでなく、動線や光の入り方まで考えられていることが伝わってきます。
また、伊庭氏はヴォーリズの思想に共感していた人物ともいわれており、近江兄弟社の活動にも理解を示していたようです。
実業家として教育や福祉にも関心を持っていたことから、両者の関係は建築にとどまらない広がりを持っていたのかもしれません。
なお、ここで記載している内容は、
過去の訪問時の記憶やパンフレット、インターネット上の情報などをもとにまとめたものです。
できるだけ正確に書くよう心がけていますが、気になる点があれば、現地の案内や公式資料等もあわせてご確認ください。
また、掲載している写真は約6年前に撮影したもので、現在とは異なる点がある可能性があります。
