旧八幡郵便局
2025年09月28日
今回は、滋賀県近江八幡市にある旧八幡郵便局をご紹介します。
1921年(大正10年)、ヴォーリズの設計によって建てられた木造2階建ての郵便局です。
スパニッシュ様式を基調としながら、日本の建築の要素も取り入れられています。
ヴォーリズの初期作品のひとつで、正面妻壁を曲線状に立ち上げたデザインには、その後のヴォーリズ建築で多く使われるスパニッシュ・デザインがすでに現れています。
建物の中には、郵便局として使われていた頃の部屋の構成が残っています。
1階にあったのは、郵便の窓口、局長室と応接室、集配室、事務室。
2階には電話交換室と、夜勤のための仮眠室がありました。
現在では電話も郵便も別々のものとして考えますが、当時の郵便局は電話や電信を扱う場所でもありました。そのため、2階には大きな電話交換室が設けられています。
2階の電話交換室には、建物を見ただけでは分からない仕掛けがあります。
床下には、おがくずと灰が詰められていました。
目的は防音と断熱です。
一方、天井の上や内壁の裏には隙間が設けられ、建物内部に空気を循環させることで、湿気による木材の腐朽を防ぐ構造になっています。
見えている壁や窓だけでなく、その内側にも郵便局として使うための工夫が残されています。
旧八幡郵便局には、さまざまな方向に窓が設けられています。
大きな室内に光を取り込み、同時に風を通すためのものです。
郵便局として多くの人が働く1階。
電話交換業務が行われる2階。
それぞれの室内へ自然光と外気を取り込めるよう、多くの窓が配置されています。
外から見ると外観をつくる窓が、内部では採光と通風のための設備になっています。
正面には、曲線を描くアーチ型の玄関があります。
この玄関は1921年からそのまま残っているものではありません。
郵便局としての役割を終えたあと、建物は事務所や倉庫、店舗などとして使われました。
その過程で、もとの玄関部分は取り壊されています。
その後、建物の保存再生に取り組んだ「一粒の会」によって修復が進められ、失われていたアーチ型の玄関も、かつての姿に復元されました。
現在の外観には、建築当初から残っている部分と、保存活動によって取り戻された部分があります。
※建物に関する情報は、近江八幡市観光公式サイト、国土交通省・観光庁等の公開資料をもとに確認していますが、資料による表記や年代の違い、その後の調査等により内容が変更されている場合があります。また、掲載写真は撮影当時のもので、現在の建物・展示内容等とは異なる場合があります。
