大丸心斎橋店本館(旧本館)
2026年04月03日
今回は、大丸心斎橋店旧本館のご紹介です。
写真は、現在の本館へ建て替えられる前に撮影したものです。
大丸心斎橋店旧本館は、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計により、1922年(大正11年)から1933年(昭和8年)にかけて段階的に建設されました。
まず面白いのが、見る方向によって建物の表情が違うこと。
心斎橋筋側はネオ・ルネサンス様式、御堂筋側はネオ・ゴシック様式です。
御堂筋側では縦方向を意識した壁面が続き、近づいて見ていくと石の透かし彫りなどに幾何学的な模様も見つかります。
そして、大丸心斎橋店の面白さは外観だけではありませんでした。
館内にはアール・デコの装飾が随所に使われ、天井にはイスラム様式のアラベスク調の模様。
フレスコ画やレリーフ、ステンドグラス、照明なども取り入れられていました。
ひとつの様式で統一するのではなく、いくつもの異なる意匠が同じ百貨店の中に存在していました。
なかでも知られているのが、エントランスを飾っていた孔雀のレリーフです。
実はこの孔雀、最初から孔雀として注文されたものではなかったそうです。木造店舗の焼失から再建する際、「不死鳥」のデザインをアメリカへ発注。ところが、何らかの事情で届いたのは孔雀でした。それをそのまま採用したものが、長く大丸心斎橋店を飾ることになります。
エレベーターホールにも装飾が施され、1階のメインホールには華やかな天井とシャンデリアがありました。買い物をするために訪れる百貨店ですが、入口を通って、天井を見上げ、エレベーターを待つ。
そんな普段なら通り過ぎてしまう場所にも、見るものがありました。写真に残っている旧本館は、その後建て替えられ、2019年に現在の本館が開業しています。
けれど、ヴォーリズの建築がすべて失われたわけではありません。
御堂筋側の外壁は、建て替え工事の間もその場所から動かさずに保存。
旧本館から取り外された天井やエレベーターホールなどの内装部材も、補修したうえで現在の建物に再利用されています。孔雀のレリーフも受け継がれました。
昔の建物をそのまま見ることはできなくても、残されたものを探しながら現在の本館を歩くことができます。
※写真は建て替え前に撮影したものです。建物については大丸心斎橋店・施工会社等の公開資料を参考にしています。記載内容は資料および撮影時点の情報をもとにしており、現在の建物とは異なる部分があります。
